「僕も、年内は無理だと思うよ。たぶん、1月中というのも……。まあまあ、とにかく明日、現場に行きますよ。Tにも来てもらって、棟梁や親方にも話してみましょう」翌日、現場に、Tさんと社長がやってきた。「とりあえず、年内は無理なので、1月中には、何とか引っ越しできるようにしてください」Tさんが言った。社長も棟梁も、親方も黙っている。建築現場では、建築家が一番偉い。建築家は、先生だ。だから、よっぽどのことがないかぎり、職人は反論しない。
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けれど、黙っているということは、できないということだ。私は、あらためて、棟梁に聞いた。「一月中に、できあがるんですか?」「まあ、壁と屋根はできるだろうから、とりあえず、一月中に何とかひと部屋だけは完成させておいて、そこを住めるようにしておくっていう手もありますよね。他の現場でも、そうやって、完成前に引っ越してきて、住んでる施主さんもいますよ」棟梁が言った。要するに、一月中には完成しないということを言いたいのだ。Kさんもうなずいて、「引っ越しは何とかできるかもしれないが、ただ、どっちにしても壁は間に合わないし、あまり焦るのもよくないねえ」私は、ただうな垂れた。現場で強いのは、職人だ。私がわめこうが、Tさんが催促しようが、実際に現場で家をつくっているのは職人だ。その職人が、一月までには完成しないと言っているのだ。